inmylife

みたもの記録

【舞台】ねじまき鳥クロニクル

2月22日(土)東京芸術劇場プレイハウス

 

舞台を見ながら「こ、これは何を見せられているんだ…」と思うときがあるけれど、今回がそれだった。といっても、単にこういう世界観に馴染みがないから、というだけかもしれない。そう…村上ワールドに馴染みがないんですよねぇ。というのは一度置いておいて。ねじまき鳥クロニクル、始まり方がまず好きだった。だんだんと照明を落とし、語り出す成河氏。どうしてもあれはルキーニを思い出してしまうよな。つくづく、狂言回し的な立ち位置、俯瞰した役が似合うひとだ。

 

アフタートーク門脇麦ちゃんが言っていた、「物語の筋を追うというより、例えばそのシーンにおける村上春樹さんや、(演出の)インバルのエッセンスを感じ取ってもらえたら」というはなしを聞いて、ちょっと安心した。何を隠そう、どうにも全体像が捉えきれなかったからである!(そんな堂々と)

一番分からなかったのは、主人公オカダトオルが、去っていった妻を探そうとしていたら辿り着いたホテルで、「女性たちを救う」行為をするというくだり。男性が女性に対して行うだけじゃないというのは、初老の女性・ナツメグの話で分かったけど、「救う」とは……?生理現象のはなし?全編にわたってコンテンポラリーダンスで表現されるから直接的には描かれないのだけど、だから余計にモヤモヤするんだろうか。想像して楽しむ作品ももちろんあるけれど… これは小説読んでいる人が楽しめる作品かもな、と途中から思いました。これカフカのときも思ったかもしれない笑

 

渡辺大知くんの芝居は映画でもけっこう好きで、今回はじめて生の芝居を観たけれど、本人のまっすぐさが役にも合ってたなぁという印象。声のトーンを落として話すのも良かった。歌も、そりゃそうなんですが上手い!ポーンと二階席まで届く届く!この、特殊なつくりの作品には、ただ歌がうまいという役者よりもきっと彼のように、個性をもった歌い方ができる人が適任だったんだろうと思った。

 

そして成河さん。彼は言わずもがな素晴らしいんですよね…期待を余裕で超えてくる。空間支配力、とツイッターにも書いたけれど、しゃべることで空気がピンとはりつめ、空間の矢印がすべて彼に向く、そんなちからを持ってる気がする。ひとを集中させるちから。すごいよなぁ。去年のBLUE/ORANGEに始まり、エリザベート、タージマハルの衛兵ときて今回のねじまき鳥クロニクル。見るたびに発見がある役者さんだなと。身体能力の高さ、そして今回はミュージカル的でない(エリザでも違ったけれど)歌唱がより際立っていて、なんだこの心地良さは!と思うなどした。

 

インバル・ピントというクリエーターについてはまだまだ知らないことも多いけれど、海外と日本の作り手がイチから一緒に作品を立ち上げるということ、その「世界初演」(と成河さんは言っていた)を観られることは貴重な体験であるのは確か。今回の「分からなさ」も自分の感覚として大事にしたい。