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みたもの記録

【映画】リーマン・トリロジー(NTL)

2月20日(木)

 

念願の、初ナショナルシアターライブ。サム・メンデス演出の3人芝居。

https://youtu.be/JXHOOK4bQVo

 

元々NTLiveに興味があったこと、そしてツイッター上で期待の声が多かったこともあり、行くことを決めた。海外の演劇作品には今までほとんど縁がなく、去年の東京芸術祭「暴力の歴史」以来二度目の観劇(観賞)。芝居を見ながら字幕が追えるのか、221分という長丁場で集中力が持続するのか、話を理解しきれるのか、など不安点もけっこうあったけれど、実際のところそれらはほぼ問題なかったのでホッとした。3人で160年にわたるリーマン一家の栄枯盛衰を描く、ということで、それはそれは膨大なセリフ量だったけれど、テンポよく掛け合いがつづいたおかげで飽きることは一切なかった。あとは、意外にも難しい用語はそこまでなかったこと、役者3人の演じ分けが凄まじかったこともポイントかもしれない。子どもから青年、高齢者、ジェンダーも自在に行き来して何役も表現する。でもそれが自然で、違和感がないのがすごい。さっきまで赤ちゃんを演じてたと思ったら中年男性にもなるし、自ら語りも担う。そんな複雑であっても観客が戸惑わないで済むのは、前述した通り、セリフのテンポや、構成の巧みさなんでしょう。こんな私みたいな海外演劇に慣れてない初心者でもちゃんと楽しめるんだな、という驚きとうれしさ。次につながるいい体験になった気がする。

 

リーマンショックという、アメリカ経済の大きなトピックに至る話であると同時に、160年にわたる家族の話であることが面白く、この作品と自分の距離を縮めてくれた気がする。多世代を描く物語に惹かれるのはなぜだろう。ナイロン100℃の「百年の秘密」を観たときも同じことを思った。子どもから大人へ、そしてまたその次の世代へと話が移り変わっていくと、当然ながら時間の経過を目の当たりにする。それは切なく、悲しくもある。時間の経過は誰しも避けられず、無力に思えるけれど、その一瞬にして過ぎゆく人生のなかでひとは何をするのか、何ができるのか、何をしたいのか。そういうことを、自分の身に置き換えて向き合える。思考を深いところまで持っていける。だからこういうファミリーヒストリー的な話は、一見壮大なようでいて人間のアイデンティティみたいなものを見せつけ、抉ってくるから、他人事に思えず目が離せないんだろうな。

 

あ、プラスの感想ばかり書いたけど、一つ思い出した。子どもの頃からすべてを論理立て、戦略のもと遂行してきたフィリップ・リーマンが結婚相手を探す段になり、いろんなタイプの女性に点数をつけて、自分に見合うひとを探すというシーン。「そういう時代」と一括りにすれば終わるけど、見てていい気持ちにはなりませんわな。結局、彼は最高得点の女性ではなく、家庭的かつ奥ゆかしい(確か)85点の女性を選び、自分のしごとを献身的に支えてもらうわけだけど。なんかこう、人間は長いこと男性と女性という分け方のもと、序列をつけて物事を進めてきたんだな、という事実を突きつけられる思いがした。そのあとチラッと、のちに州知事になる…何リーマンか忘れてしまったけど、彼だけが「なぜ伝統だからといって女性が不公平な扱いを受けるのか」と発言していて、ほう…となった。そのシーン一瞬で終わったけど。こういう話を素通りはもうできなくなったから、今後も気になったことはちゃんと記憶しておこうとおもう。

 

 

3月からブロードウェイで公演されると知って、いつか来日版もないだろうかと期待したり、日本の役者でこれを成立させることは可能なんだろうかと考えたりしながら、次の機会を楽しみにしていたい。