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みたもの記録

【舞台】宝塚「WELCOME TO TAKARAZUKA/ピガール狂騒曲」

新年明けました。2021年どうなるんでしょう。

不安は尽きないけれど、なんとかやっていくしかないんだろうなぁ。

 

ところで、年内に更新しようと思っていた記事がいくつか編集途中のまま終わっていたので、このタイミングでアップしちゃいます。早くしないと記憶が!

 

以下、 簡単に目次を。(4000字弱書いてしまったので…)

  

やさしさに包まれて

 

12月某日。

2020年ラストの観劇を飾ったのは、なんと、人生初の宝塚でした。

向かいのクリエにはよく行っていたけれど、もちろんはじめての東京宝塚劇場。座席につくまで、いや、幕が上がるまでなんだか実感が沸かなくて、本当にこれから私は宝塚を観るのか…?という不思議な気持ちのまま開幕。そしたら第一声…

 

 

 

「ウェルカム!ウェルカム!タカラヅ〜〜〜カ〜〜〜!!!!」

 

 

 

「??????」

 

あれ、私、めっちゃウェルカムされた……?(←幕間で友達にリアルに言ったひとこと)

 

からの、チョンパ。これがチョンパ…ほうほう…

冒頭の「それが宝塚」のメロディーがすごく耳馴染みがよくて、終演後もしばらく頭の中ぐるぐるしてた。なんなら今も。

  

それにしても、新参者にもひたすらやさしい宝塚。こんな初心者の私にも扉を全開にしてくれるなんて。実は去年、観劇目標の一つに【宝塚と劇団四季を観に行く】というのを掲げていたものの、延期や中止などいろんな状況が重なり、すぐには難しく。そんな中でようやく叶った12月。タイミングや縁にも感動した。声をかけてくれた友人にも心から感謝!

 

引き込まれる日本物レビュー 

 

まずはレビュー「WELCOME TO TAKARAZUKAー雪と月と花とー」について。

こちらの監修は坂東玉三郎さん。歌舞伎でいつも拝見している玉様が宝塚…!そのことを知って、今回が初観劇でよかったかも、と一層うれしくなる。

 

タイトルのとおり雪月花をキーワードに、日本の四季や心情を表現する日本物レビュー。まずレビューというのはなんぞや、宝塚の舞台構成とは…?となるくらい初心者だった私ですが、友人から過去の映像を見せてもらったりして、一応事前にイメージできていたのは良かった。よく「ジャニオタなら絶対好きだし、すぐ馴染めるよ!」という言葉を聞いていたのだけど、たしかに、それは映像だけでも思った。一度でも帝劇に通う日々を経験していたらピンとくるような、エンターテインメントの世界観。なるほどなるほど。ジャニオタと宝塚の親和性が高いのも納得ですわ。

 

今回のレビューは、舞踊の美しさと、ステージを隅から隅まで使った群舞がとても見応えがあって、とくに斜め一列を使ったダンスには圧倒された。洋楽に乗せた日本物レビューというのも、不思議な魅力があってぐいぐい引き込まれた。

個人的なお気に入りは、第5場の「花の巻」。大きな鏡の前で練習をしている男役さん(演じるのは月城かなとさん)が、鏡のなかの自分に誘われるかのようにして、次第に役者の自覚を持ち…というような内容。チャイコフスキーの「花のワルツ」に乗せて鏡のなかの自分と軽快にやり取りする様子が、どこか喜劇映画のようでとても楽しかったな。

 

ちなみに、1月2日にはNHKBSでこのレビューがすでに放送済みで、上演から放送までの早さにもおどろく。番組ゲストには、宝塚ファン・珠城りょうさんファンを公言している歌舞伎俳優の中村橋之助さん。今録画を再生しながらこれを書いてるけど、橋之助さんほんとうにうれしそう…(反応がだいぶこちら側だ…)いやはや、よかったねえ…。ポーの一族も応援してます。

 

 

時代を映すピガール狂騒曲

 

つづいて、ミュージカル「ピガール狂騒曲〜シェイクスピア原作『十二夜』より」。これがまた素晴らしかった!!!事前に情報を入れないで見たほうがいい、とのことで、内容を全く頭に入れておらず、キャラクターの設定や最後の展開もすべて新鮮に受け取れたのが良かった気がする。改めて十二夜のストーリーを見返したら、ほぼ一緒でびっくりした。前回ブログに書いた「外地の三人姉妹」の原作、チェーホフの『三人姉妹』もだけど、有名な戯曲は知ってた方が理解が深まるのは間違いない。でも、こうやって観劇体験とあわせて知ることで、より印象に残って良いのかも。と思うなどした。

 

舞台は1900年のパリ。ミュージックホール「ムーラン・ルージュ」を中心に、いくつかのストーリーが絡み合って予想外の展開になっていくロマンチックコメディ。最初はまず、このムーラン・ルージュの現状が語られる。かつて街一番の人気を誇っていたホールも、今や閑古鳥が鳴いている状態で、劇場の支配人であるシャルル・ジドレール(月城かなとさん)はなんとかして起死回生の一発をはかりたい様子。そこに現れる一人の青年・ジャック(珠城りょうさん)は、ムーラン・ルージュに憧れを抱き、どんな雑用でもいいから働かせてほしいとシャルルに頼み込む。ただ、それは彼の複雑な状況からくるものだった――。

このジャック、実は男装した女性だったというのが話の肝であり、原作の十二夜に忠実な点。途中までは完全に男性キャラクターだと思って見ていたから、女性だと判明したときは「そうなるのか…!」と納得しつつ、「あれ、じゃあこのあとの展開って?」という疑問が同時に湧いて、脳内が一気に混乱した。

 

結末を言うと、主人公ジャック(改めジャンヌ)は、劇場の支配人であるシャルルと結ばれ、当初ジャックを男性と思い込んで思いを寄せていた作家・ガブリエルは、ジャックの異母兄弟、ヴィクトールと結ばれる。

 

これだけ書くとなんのこっちゃだけど、話がラストにたどり着いたとき、それまでのドタバタっぷりもしっかりとラストへの布石になっていて、見事だな〜と感心してしまった。あと、いわゆる“男装の麗人”が主人公というユニークさもさることながら、最後はトップさん(珠城さん)と二番手の男役さん(月城さん)が結ばれるという、さすがに宝塚初心者の自分でも「これはイレギュラー…ですよね…?」というような展開がなんとも面白かった。こんなことあるんですね。いや、そんなにないのか。

 

でも、このピガールを見て良かったなと思ったのはまさに、上に書いたような点で。というのも、この物語の根底にあるのが、“従来の価値観を脱ぎ捨てて、新たな時代へ”というメッセージだと思っていて、それが随所に散りばめられ、ラストにまでしっかり貫かれていたのが印象的だったから。

 

舞台となった1900年のパリは文化や経済が発展し、新たな時代へ向かっていたとき。時代こそ違うけれど、2020年から2021年、今この時期とも少なからず重なるように思う。冒頭、夫のゴーストライターを続けることに嫌気がさしたガブリエル(美園さくらさん)は、〈女性が男性に従う時代はもう終わった〉とはっきり言い放つ。そしてジャックと出会い、自らがステージに立って光を浴びようと決意する。一方のジャックは、家庭の事情から自分を偽って生きているけれど、ありのままの自分で想いを伝えたい相手と出会い、苦悩する。最終的には女性であることを明かしながらも、服装はこれまでどおり、“ジャック”として。美しいドレス姿であらわれ、周りも皆びっくり…というありがちな流れじゃないのがとても良かった。

作・演出の原田さんがプログラムで書かれていた「ベル・エポック版“とりかえばや物語”」というのも踏まえると、ジェンダー視点も加わってより興味深い。

 

あともう一つ。十二夜のストーリーの軸は恋愛だけれど、ピガールでは、ジャックの相手となるシャルルには、そこまで恋愛要素が感じられないのもそれはそれでいいなと思った。一見厳しい仕事人のようでありながら、ダンサー1人ひとりの衣装に気を配ったり、「興行主にとって踊り子は宝」と言って、愛情深い面を見せたりするシャルル。興行という場を愛し、自分の仕事に誇りを持っている姿は魅力的だったし、ジャックが次第に惹かれていく過程も“分かるな”と思えた。欲を言えば、最後まで恋愛が絡まないバージョンも見たい、なんて思ってしまったけれど。でも、いろんなかたちの愛があり、カップルのかたちがある、という描き方でハッピーエンドを迎えたのは良かったな。

 

月城さんシャルル、めちゃくちゃかっこいいんだ……。カフェブレイクでは「珠城さんを包み込むなんて、どんな包容力…」とおっしゃってたけど、いやいや、すてきな包容力でしたよ…包まれたいわ月城シャルルに……。「稽古場でキスシーンが追加になって〜」のくだりもめっちゃ面白い。れいこさん面白い。癒やされる。かわいい。素敵。

 昨春ふと月城さんに目を奪われ、ゆるやかに追っていたら、のちのち某KPOPグループ…というかBTSがお好きと知って叫んだのは言うまでもない。こんなことあるんです?????ラジオでDynamiteもかけていて「ひえ〜〜〜〜〜(泣)」となった。この話はまたどこかで。。

 

 

最後に、劇中で歌われる「ラ・ベル・エポック・ド・パリ」の一節を紹介して終わります。 

回る回る赤い風車のように/私の人生 自分で選び

人生という名の舞台/自分で決めるのよ今

 このパートを歌うのは、自立の道を力強く歩み出すガブリエル。

人生の決定権は自分にある。誰でもない、この自分。

何より、2020年を締めくくり、新年を始めるときの作品がこういうポジティブなエネルギーとメッセージに満ちているというのが素晴らしい。私自身とても元気づけられた。

 

はじめての宝塚観劇が月組というのもうれしかったな。なかなか大変な時期だけれど、機会を見つけてまた観に行けるように、しばらくは情報をチェックしておこうと思います。

 

 

 おわり。