inmylife

みたもの記録

ミュージカル「フランケンシュタイン」〜Act1

2020年は見た作品についてコンスタントに書くことにしたんでした。すべては無理でもなるべく。あとで自分が読み返すための記録として。

 

そんなわけで今年一発目は1月11日のフランケンシュタインよりスタート。このあと書くのは昨日25日に見た公演の話がメインになりそう。

 

年明けにふさわしいハッピーエンディングミュージカルでしたね、えぇ(柿澤さんの発言参照)。というのはポスタービジュアル見ても違うということがまぁわかるし(笑)地獄へようこそ感がすごい。ただ、地獄地獄とは言うけれど、一体なにが地獄なのかと。うわさは耳にしてたから早くそれを自分の目と耳で確かめたくて、本当に楽しみだった。何せ、昨年2月に柿澤勇人という役者をはっきりと認知し、その時点で次に決まっていたミュージカルがこのフランケンシュタインだったから。いやー、待ってましたよ、心の底から。

 

前段このくらいにして、本編の話。

 

原作はあまりにも有名な小説。とは言え読んだことはないけれど、ゴシックホラー、ゴシックロマン。この時点でだいぶ好き。元の話を大胆に脚色してるというから、舞台版として大いに楽しめそうだなというのが最初の印象。そして見どころとして、Wキャストも通常とはやや違うのが面白い。同じ役者が一つの作品のなかで二役演じ分ける。だから単純に役者の組み合わせだけじゃなく、役の組み合わせも追加されるから、そりゃ解釈があふれまくるよね……と納得するなどしました。

1幕:柿澤ビクター×加藤アンリ

2幕:柿澤ビクター×加藤怪物/アンリ

         柿澤ジャック×加藤怪物

これがあと柿澤×小西で2役ずつ、中川×加藤、中川×小西でも2役ずつ。いやこれ大変な世界だ。実に複雑。ハマればタノシイ。

 

このブログ書くために感想を紙に書き出したら止まらず、何ページ書くんだよ、って引くくらい書いてしまったので(笑)かいつまんで綴りますが、結論から言うと自分はどっぷりハマるタイプの作品でした。だからここまでいろんな感想や解釈を眺めて楽しめてる。正直、考察が得意な方ではないからいつも他の方の考察を読んで「なるほど」と分かった気になって終了してるけども、今回に限っては自分もあたまをいろいろ捻りたくなってしまった… それは前述したWキャストの妙かもしれない。作品としての(いい意味での)余白の多さかもしれない。年明け早々、ここまでのめり込んでしまって大丈夫かという気もしないでもないけれど、その心配は一旦置いときます。

 

ざざっといきます。まず1幕。

◼︎オーバーチュア〜実験室

オーバーチュア大好き芸人としてはそこからの例のシーンへの流れ込み方がいい感じに不穏でとても良い。不穏、好き。映画も舞台もEDよりOP重視派なので今作もその点で私好み。

 

◼︎シーン2 研究室/♪ただ一つの未来

ビクターとアンリのバチバチ感がたまらない。才能と才能、出会ってしまったのかここで…!ここから始まってしまうのかーーー!!!と高揚してくるアドレナリン楽曲「ただ一つの未来」。なぜアンリはビクターについていくことにしたのか?が描かれる大事な場面でもあるから、歌詞を聞き取りたい(課題)。純粋に研究に突き進むビクターへの尊敬、羨望。出会ったときのことを回想する曲で「君は太陽さ」と表現するほど、ビクターのまぶしさに惹かれたアンリ。アンリという人物をここまでにしてしまうビクター。恋愛ではない(と思う)けれど、確実に友情を超えたものが見え隠れする二人の関係性。すでに苦しい未来が見える…。

 

◼︎シーン4/♪孤独な少年の物語

幼い頃母親をペストで亡くし、その母親を生き返らせようとしたことがきっかけで人生が変わってゆくビクター。やはりここで少年を突き動かすのは母なんだなぁという感想をぼんやり抱いてる。父ではなく母。なんでしょう。絶対的な存在としての母?

子ビクターと子ジュリアの身長差がたいへんに微笑ましい。あとでビクターが身長を越したんだね、とニコニコしちゃう。子役ちゃんたちの演技、歌のうまさに舌を巻く。

 

◼︎シーン5 酒場

はい来ましたよ酒場!私のだいすきなシーン!いや見た人みんなすきだよね。見なくても好きだと思うし(?)全体を通してマックス幸せなシーンであり、これが1幕早々に訪れ、それが一瞬であり、直後に一瞬で落ちるという現実。ジェットコースターでいえば最初のヤマを登りきって一旦ふわっと停止してる、まさにそんな場面です。刹那的酒場。わちゃわちゃしててほんとうに楽しそうなんだけど、そのあとを予感してしまって泣ける。つらい。

 

♪一杯の酒に人生を込めて

ビクターとアンリが互いに打ち解けあい、語り合い、酒を酌み交わしあって名実ともに良きパートナーということを確信しあう尊いナンバー。書いてて泣けてきた…。エレキがキュイーンと鳴るのも、ジャジーな始まり方も最高オブ最高。

 

ちなみに、パンフに歌詞が載っていたので、思う存分解釈を広げてみたところ、ちょっと気になる箇所が。

一杯目は憂いを込め、もう一杯は不安を」(アンリ)

それを受けて、

一杯目に絶望を込め、もう一杯は怒りを」(ビクター)

これどういうことだろか。アンリは憂い、不安。ビクターは絶望、怒り。ビクターは何となく、酔いながらブツクサ言ってるから絶望や怒りというワードに違和感ないけど、アンリの憂いや不安とは…?そう思って前後の場面を思い出すと、これのあと、ふたりはコップを持った腕を交差させて、互いのコップから酒を飲む。「おとこたちのアツい友情かー!」となってたけど、この交差させるやつ、毎度やってます…よね?繰り返しになるけど、アンリが一杯に込めた「憂い、不安」を飲むのはビクター、そしてビクターが込めた「絶望、怒り」を飲むのはアンリ。※これちがうwww 腕交差させても飲むのは自分のコップに入った酒だからなんの深読みでもないwwwということを観劇中気づいて笑いをこらえるのがつらかったです(1/27ソワレ)なんとなく、その後の二人を予感させるようでゾッとしてしまった。アンリ(便宜上のちの怪物)は、絶望や怒りで復讐へと走る。一方のビクターは自らのしたことが巡り巡って精神的に追い詰められ、常に不安と後悔が付きまとうようになる。うーーーん。さすがにここまではないか。でもこうして見ると、あの酒場のシーンの重要性も増してくるから面白い。

 

◼︎シーン6 法廷、ビクターの部屋

ここもまぁ重くてつらくてしんどくてだいすき…(基本重いのすき)2幕へ向かっていく1幕の終わりとしてとても大事な場面。ビクターの葛藤がいよいよ加速していく、独白楽曲♪僕はなぜ。歌詞くれ妖怪になってしまうんだけど、ざっくり言うと「自分の身代わりとなって死のうとしてる親友アンリを助けたい、でも数パーセントは己の生命創造という研究のためにその首がほしい。いやでも……」という葛藤に次ぐ葛藤、そして苛立ちがバンバン伝わってくる。アドレナリンがやばい。柿澤さんの華麗なるマント捌きもまず一発ここで披露されます。正面に向き直るとき片手で布を持ち、回転と同時にバサァ!!が至高です。

この苦しみ、のたうちまわる柿澤ビクターから放たれるロングトーンから、場面切り替わってスッと次のセリフへと移るのが毎回静かにときめいてしまう。という個人的な感想。

 

◼︎シーン7 刑務所〜処刑場

♪君の夢の中で(アンリ)

これまた無限解釈楽曲ですね… 加藤和樹さん、小西遼生さんという二人が演じるそれぞれのアンリによってだいぶ受け取る印象が変わるという不思議。ちなみに、和樹アンリはほんとうに晴れやかな表情で歌い上げるけど(見方によっちゃサイコパス風味)、小西アンリはどこか苦しみが混じったような複雑な表情をしていて人間味があり、両方見ちゃうとアーーーもう混乱!!!!となります。なんという沼。

メロディはとてもさわやかかつキャッチー、覚悟を決めたおとこが親友へと送る旅立ちのメッセージ、という名の激重ラブソング、という名の呪いの遺言みたいな曲なのだけど(あゝ地獄)、多重に意味を含んでいておもしろい。すごく。これはおそらくずっと話せる。

こちらもありがたいことに、パンフレットに歌詞が記載されており、個人的にとてもしんどくて好きなのが、「君が見せてくれた未来は/ここで終わるけれど どうせ/あの日君に出逢っていなけりゃ/この人生なんてなかったのさ」です。はー、つらいぜ。これを実に清々しい笑顔で歌い上げ、未練などない!君を信じてる!あとは任せた!といった様子で断頭台へとスタスタと向かう和樹アンリ。潔いかよ。一方、歌いながら日によっては(私が見たときは)うつくしい涙が頬をつたい、つらさを必死に振り切って笑顔を絞り出してるような小西アンリ。なんでここまで違うんだ…俳優さんはすごいなとしみじみ思います。

前後するけど、刑務所で面会するビクターは最初こそ「どうして君が死ななくちゃならないんだ、僕が真実を話すから一緒に行こう…!」と言うのに、アンリに「(真実を話したことで)僕じゃなく君が死んだら研究は誰がやるんだい?君しかできないんだよ」と諭されたあたりはもう子どものように泣きじゃくっていて。和樹アンリは既出のとおり穏やかな笑顔で菩薩のようなのだけど、小西アンリは、"ビクターの泣き顔見たら死ぬのをやめたくなりそうで見てない"ようにしか見えず、よりつらさがダイレクトに伝わってくる。そりゃつらかろう。一緒に生きていこうよ…ってなっちゃう。キャストによって引き出し合う感情はこうも違うのだなぁ、と感慨深くなる場面。

 

ひと呼吸置いてまだつづきます。

 

「君の中で生きるよ」なんて、古今東西使い古されたフレーズだけど、今作では前提として、アンリは一度戦場で殺されかけたところをビクターに助けられてる。興味深いのが、その死一歩手前のアンリはもはや状況を受け入れていて、本来は助けを求めてはいなかった。生きようとはしていなかったという点。ビクターもまた、アンリに対し同情とかではなく、恐らくは自らの研究のプラスになりそうという理由でアンリを助け、仕事仲間とする。だから出会ったときは互いにゼロスタート。友情も何もない。そんな二人が、1幕ラストでここまで感情の揺れ動きを見せるのだから不思議だし、見る方も惹きつけられてしまう。「あのとき助けてくれてありがとう」ではなく、「あのとき助けてくれて(寿命が伸びたおかげで、君というフィルターを通してこんなに面白い世界が見れたよ)ありがとう」なんだろうな、という気がする。全体をとおして、アンリの心の動きがかなり興味深い。そして読めない。

 

そんなふうに、「君の夢の中で生きよう!」と晴れやかに言い残して死ぬのに、2幕では怪物がその"君の夢"を終わらせにかかるんだから、なんともこれぞ地獄か、というフランケンシュタイン

 

そろそろ1幕が終わるのでこれだけ。って、まだ2幕にすら突入してません。やばい。

◼︎シーン8 実験室

♪偉大な生命創造の歴史が始まる

今作のメインナンバーともいうべき一曲。これは初演のプロモーション映像で何度見たか分からない。ようやくお目にかかれてうれしい。

先ほどまでの、アンリとの別れで心を引き裂かれ、衰弱したようなビクターはどこへやら。死んだばかりのアンリの首を持ち、愛おしそうに抱えながら禁断の生命創造へと突き進むビクターはもはや狂気。それが爆発するナンバーですね。「神よ、祝福を」で十字をきるのがたまらないのは私だけではないはず。そして「さもなくばいっそ呪いをかけろ何も畏れぬ」まで、一気にかけのぼる感じがすごくすごく良い。アドレナリン楽曲ですこれも。実際怪物をつくりだしてしまうわけだけども、実験が成功、やった!アンリがいきかえった!(ではないのだが)一転、怪物の誕生つまり己の破滅へのカウントダウンといった感じで事態急変し、鎖からの銃からの逃亡からの「アンリーーーーーッッッ!!!!!」と叫び、幕。

 

くるしい。くるしすぎる。なんじゃこりゃ。

一発目の観劇のときは情報量が多くて目まぐるしくて、体力も奪われるしで、席から立ち上がれないほどの疲労感だったのを覚えてる。

 

ここまで書いておいてなんですが、2幕は同じ記事内でつづけて書ける気がしないから一旦おわります(笑)雑すぎるな。2幕はさらに怪物とアンリについての解釈が飛び交うから、正直自分の感想メモが収集つかなくなっており。まったくしっくりくる着地ができておらず… 東京楽か、千秋楽が終わったらまとめるかもしれません!いや、まとめきれないかもしれない!

 

だらだらとした文章を、もしここまで挫折せずに読まれ方がいらっしゃったらお詫びを申し上げたい。着地のないブログですみません…!こんなに長文でまとめるブログのつもりなかったのに、一発目がフランケンだったもので…自分の首をしめてる気がする。次の作品からはあっさりいきます。あっさり。多分。